期間限定_7
2009年 01月 29日
っていうか、もうこれギャグっていうか……。
フザけ過ぎたかな?スイマセン。
モニター越しのなのはを見て硬直するティアナ。
『ティーアーナー? 何してるのかなぁ?』
「いえ何も! 本当にまだ何も!!」
『……まだ?』
「あわわわ……これからもです! 全く何もありません! むしろ助けてください!」
ていうかあたし!?あたしが悪いの!?……どうしてこんなに恐怖を味わわなくてはならないのか……理不尽だ!本当に理不尽!助けてー兄さん!
ティアナは全力で理不尽さを叫んだ……心の中で。
なのはが怖くて口に出して理不尽だなんて言えなかった……。
『そうだよね……ティアナは悪くないよね、悪いのはフェイトちゃん……』
「私? なんでー? そんなことよりなのは、邪魔しないで欲しいな」
『邪魔……? わたしのことを邪魔だって言ったの? フェイトちゃん』
「そうだよ、今からティアといいとこだったのに、もう」
「フェフェフェフェイトさん、お願いですからそんな言い方ヤメテー!!」
「大丈夫だよティア、今すぐ邪魔者は消しちゃうから!」
そう言ってモニターを落とそうとするフェイト。
「だだだだだめですって! 今そんなことしたら危ないです!」
「危ないって何が? 大丈夫だよティアは何も気にしなくていいんだよっ」
いや、あたしの命も危ないけどフェイトさんも危ないのでは!?
モニターを強制オフにしようとするフェイトを、ティアナは全力で阻止した。
たぶん今まで生きてきた中で一番必死の行動だったと、後で自分で思うくらいに。
『へぇ~ティアって呼んでるんだ……親密そうだね、フェイトちゃん』
「うん、ティアが今日はそう呼んでいいって!」
「ギャー! 言ってません、そんなこと言ってませんよなのはさん!」
「え~ティア、そう言ったじゃない? ウソはダメだよ?」
ダメだこの人…………。
ティアナは絶望した。
あ、兄さんがこっちを見て笑ってる……ふふふ、今そっちに行くからね~。
ティアナももうダメだった……。
「なのはのことは放っておいていざ2人の世界の扉を開けよう! ティア!」
「フェイトさ~ん、うちの兄を紹介しますね~」
ティアナはもう2人の世界どころか、違う世界の扉を開けたところだった。
『フェイトちゃん?』
「なに? なのは?」
『フェイトちゃんが好きなのは誰?』
「ティアだよ!」
『そう………………』
「違います違います違います! フェイトさんしっかり!!」
モニターの向こうのなのはがもの凄い顔をしてこちらを見ているのに気づいたティアナはかろうじてこちらの世界に帰ってきた。
ほんとにまずい!
なのはさん、モニターから出てきそう!
ていうかきっと出てくる、この人なら出来る気がする。
ティアナはかつて観たなのは達の出身世界のホラー映画に出てきたSADAKOという人物を思い浮かべていた。
ティア~!と嬉しそうに名前を呼びながらフェイトがティアナに覆いかぶさろうとした瞬間……
『フェイトちゃん……』
モニターからなのはの低い声が聞こえた。
『フェイトちゃんが好きなのは誰?』
「え? だからティア――」
『フェイトちゃんが好きなのは!! 誰!?』
「なのはですっ!!」
なのはの凍りつきそうな声に、急に背筋を伸ばして答えるフェイト。
『もう1度聞くよ? フェイトちゃんが好きなのは誰!?』
「なななななのはです!!!」
『うん……そうだよね。 じゃあ今フェイトちゃんが手を出そうとしてるのは誰?』
「えと……私の補佐官の、ティアナ……です」
『はい、正解』
「ええと……あれ?」
不思議そうに首をかしげるフェイトになのはが優しく声をかける。
『フェイトちゃん……こっちを見て?』
フェイトがゆっくりとモニターに顔を向ける。
『フェイトちゃんはわたしだけのものだよね?』
「なのは……そうだよ、私はなのはだけのものだよ。
それになのはは……私だけのもの……」
『フェイトちゃん……』
「なのは……」
……もしもし、どういう展開ですかこれは?
とりあえずあたしの命は助かったっていうことですよね?
モニター越しに愛を語り合うフェイトとなのはを見て脱力するティアナ。
ええと……ロストロギアの効力が切れたっていうことでいいんでしょうか?
いや「効力はかっきり3日」とはやてさんは言っていたから……愛の力ですか?
2人の愛の力がロストロギアの効力をも打ち破ったとか、そういうことですか?
…………アホらし。
もそもそとフェイトの下から抜け出すティアナ。
「あのーフェイトさん、なのはさん。
めんどくさいんであたしはフェイトさんの部屋で寝ますんで……
ゆっくり語らっててください」
「あーティアナ、ごめんねそうしてくれる?」
『ティアナーおやすみー』
自分の方をチラリとも見ずにおざなりの返事をする2人に、ティアナは心底どうでも良くなっていた。
部屋を出るときに、モニター越しにキスをする2人を横目に見てさらにどうでも良く……というか怒りすら覚えていた。
部屋に入ってからもなかなか怒りは収まらなかった。
あたしの苦労は何だったんですか!?
あの背筋の凍るような恐怖体験は!?
危うく貞操まで奪われるとこだったのに!!
おまけに……隣の部屋から怪しい声が漏れてくる……。
あああの人たちは!!モニター越しで何をやっているのかと!!
………………まぁ、いっか。
ある意味命をかけた戦いを乗り切った満足感もあってか、意外にすんなりと怒りが収まるのを感じるティアナ。
うん、何だかんだと収まるとこに収まったし。
フェイトさんへの憧れは確かにあったけど、あたしはやっぱりなのはさんのことを大切にしているフェイトさんが好きなんだな~と再認識したわ。
まあ、ある意味あんなにフェイトさんに近づけたのも役得かな?
なんだかいろいろなことがあり過ぎて自分の思考回路がまともじゃなくなった気もするけど、ひとまず命の危険が無くなった開放感でむしろ爽やかな気持ちにさえなってきたわ。
よし!明日もまだ仕事があるし、今日はぐっすりと寝てしまおう!
でも…………はやてさんだけは帰ったらどうにかしてやろうと思う。
上司だけど……部下の命を危険に晒した責任は取ってもらおう。
隣の部屋から漏れる怪しい声が聞こえないように耳栓をして、ティアナはやっと安らかな眠りについた。
―*―*―*―
翌日、管理局に戻ったティアナが見たのは。
「なのはちゃん? フェイトちゃん? 落ち着こ? な?
ななななんで2人ともバリアジャケットやの?」
エースオブエースと金の閃光に違う世界へと連れて行かれるはやてだった……。
うう~ん……ていうか、あたしの怒りはどこへ向ければいいんだろ?
なんか消化不良……。
まあでも休みもゲットしたし、兄さんの墓参りと、スバルのとこにでも遊びに行ってみようっと。
若きエース3人に振り回されて、ある意味一番割に合わなかったティアナは、その代償として1週間の休暇をもらっていた。
ティアナのいない間の雑務ははやてとリインが徹夜してでも穴埋めするという条件つきで。
***
「あ、ティアナ~」
「なんですかフェイトさん?」
「今回はいろいろとごめんね……仕事のことは気にしないで休暇楽しんできて?」
「はい、ありがとうございます。こちらこそいろいろスイマセンでした」
「ううん……ふふ、昨日はカワイかったよ、ティア」
「なっ!! 何を言って!! それに呼び方!!」
「ん? いいじゃない、これからもたまに呼ばせて? じゃ、休暇明けにね!」
なのはの元へと走っていくフェイトの後姿を見ながら、顔を真っ赤にしてたたずむティアナだった……。
Fin
by sknow | 2009-01-29 03:39 | SS:期間限定(中編)