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二つの月_2

続きいきます。

なんか私の書くプロローグはうっかり暗い未来を予想させそうな書き方になっちゃっていやん!ですねw

昨日の2人のモノローグ部分は時系列で言うと少しずれてます。
まあそこら辺も昨日書いたように、読み進めていくうちに何となくわかればいいなぁ……。
でも文章力がまだまだなので、どうでしょうねw


SSは下に








フェイトちゃんが家に帰ってこなくなって、もう2週間近くなる。
長期航行は無いらしいけど、今担当している事件が結構大変みたいで。
遅くまで仕事していることが多いらしく、わたしやヴィヴィオに気を使って自分の部屋に帰っている。


寂しい、な。
そう思うってことは、いつもフェイトちゃんのことを考えてるからなのかな?
そう気付いたらとたんにちょっと可笑しくなる。
わたし、本当にフェイトちゃんのことが好きなんだなー、なんて。
寂しいと思った夜は、1人ベランダから月を見上げるのがわたしの癖になりつつあった。
空に浮かぶ金色の光が、フェイトちゃんを思い出させてくれるから。
離れていても側にいてくれる気になれるから。
フェイトちゃんも同じ月を見上げてくれていたら嬉しいのに……なんて思っていたら

『なのは』
『え!? フェイトちゃん??』
『そうだよ。下、見てみて』

突然の愛しい人からの念話にびっくりしつつ、下を見たらそこにはわたしを見上げているフェイトちゃんがいた。

『ごめんね、連絡もしないで……突然会いたくなっちゃって来てみたらなのはが見えて』
『ううん、嬉しいよ! とにかく上がってきて!』
『うん、すぐに行くね』

そう言ってマンションの入り口に入っていくフェイトちゃんを見送って、すぐに玄関へと向かう。
どうしよう、すごく嬉しい。
フェイトちゃんのことを考えていたら本人が来てくれるなんて。
うちに来るときは必ず連絡してから来るフェイトちゃんだから、サプライズプレゼントを貰った気分で本当に嬉しかった。
待ちきれなくて玄関のドアを開けてフェイトちゃんがエレベーターから降りてくるのを待つ。
エレベーターが上に上がってきて扉が開いて。
わたしを見つけて凄く嬉しそうに微笑むフェイトちゃんに駆け寄りたい気持ちを抑えながら、近づいてくるフェイトちゃんを待つ。

「なのは、こんばんは」
「フェイトちゃーん」
「うわっ! 危ないよなのは」
「えへへーだって嬉しくて」
ついつい抱きついてしまったわたしを支えながらフェイトちゃんも嬉しそうに笑う。
「私も凄く嬉しいんだけど……
とりあえず遅い時間だしご近所の手前、中に入れてもらえるともっと嬉しいかな」
「あ、そうだね、えへへ、ごめんね」

ちょっとはしゃぎ過ぎたかな、なんて思いながら一緒に家に入る。
「えと……ただいま、なのは」
「あ、うん、おかえりなさいフェイトちゃん」

こんな突然の来訪でもいつもの挨拶をしてくれるのが凄く嬉しい。
別々に暮らしていても、わたしたちは家族なんだって思わせてくれる。
フェイトちゃんの帰る場所はここなんだって、そう思うことができる。
……たぶんフェイトちゃんは意識的に言ってくれてるんだろうな。
そういうところにもフェイトちゃんの優しさと愛情を感じる。

「どうしたの?」
「ううん、なんか嬉し過ぎて思考が停止してた!」
「ふふ、なにそれ?」
「なんだろうね? あは。今日も仕事遅かったんだね、疲れてるんじゃない?」
「ううん、大丈夫だよ」
そう言っていつものように優しく微笑む。
「もう、フェイトちゃんの大丈夫はあてにならないからなー」
「それを言うならなのはだってでしょ?
 私はほんとに大丈夫だよ、なのはの顔を見たら疲れなんて吹っ飛んじゃったから」

私の目を見てあまりにも普通に言うから……
なんだか久しぶりに見るその大好きな紅い瞳を見るのが恥ずかしくなってしまった。

「…………それは良かった」
「照れてるの?」
「照れてません!」

こんな他愛の無い話をするだけでも凄く幸せを感じる。

「ヴィヴィオ、もう寝ちゃったよね?」
「うん、残念だけど……」
「だよね、ちょっと寝顔だけ見てこようかな」

そう言ってヴィヴィオの部屋に行くフェイトちゃんの後ろ姿を見て、よくドラマなんかで見るお父さんみたいだなーなんて思ってしまった。


その後フェイトちゃんはわたしの出した軽い食事を食べて、お風呂に入った。
いつもよりも長いなーなんて思いながら寝室のベランダから月を見ていたら、髪を乾かしたフェイトちゃんが隣に来た。


「さっきも……月を見ていたね」
「うん……最近よく見てることが多いかな」
「どうして?」
「…………内緒」
「気になる言い方だね?」
そう言って、わたしより背の高いフェイトちゃんは身体を傾けて私の目を見つめてくる。
「だめだよ、そんなプレッシャーかけても教えてあげないよ」
「バレちゃった? ふふふ」

フェイトちゃんは執務官という仕事柄か、人を尋問したりするのが上手いから。
うっかりほんとのことを言ってしまいそうになるけど、ガマン、ガマン。
フェイトちゃんのことを思っていたくて月を見つめてる、なんて恥ずかしくて言えない。

「ミッドの月って……」
「え?」
「ミッドの月って、双子みたいだよね」

フェイトちゃんの言葉に、あらためて月を見上げてみる。

「そう言われればそうだね……考えたことなかったけど。
 こっちに来て、魔法とかいろんなことが地球と違い過ぎて、月が二つっていうのも、
 そういうものなのかなーって自然と受け入れてたとこあるし」
「なのはは、順応し過ぎ」
「えー! そう? そうかなーそんなことないよ」
「でも魔法にも、管理局の仕事とかこっちの世界にも、すぐに溶け込んでたでしょ?」
「そんなことないよー。わたしなりに色々とまどうことだってたくさんあったよ」
「ふふ……そう?」
「それはそう――」

ふと見たフェイトちゃんの横顔は月明かりに照らされてとても綺麗で……でもとても悲しそうに見えた。

「フェイトちゃん?」
「ん? なに?」
こっちを見ていつもどおり優しく微笑んだけど、でも……
「フェイトちゃん、何かあったでしょ?」
「え? 何も無いよ」
「嘘……わたしには、わかるよ? どうしたの? 仕事のこと?」
「…………」
「あ、言えないことは言わなくてもいいんだけど。
 でも、何か辛いことがあったなら、わたしに話せることは話して欲しいな」

フェイトちゃんの仕事は執務官だから守秘義務のあることが多い。
だからわたしは自分からは仕事のことはあまり聞かないようにしている。
こうして何かあったのかなんて聞くことはほんとに稀で……でも今日は何だか聞かなきゃいけない気がして。
こんな風に連絡も無く突然会いに来たのも、そう思わせる原因で。

「なのは……ありがとう」
そう言ってフェイトちゃんがわたしを抱き寄せる。
「わたし、まだ何もしてないよ?」
「ううん、こうして側にいてくれて……私以上に私のことをちゃんとわかっててくれて。
 なのはが存在してくれる、それだけで私はすごく幸せになれるんだ。だから、ありがとう」


やっぱり何かあったんだね。
でも、フェイトちゃんが話さないなら聞かない。
今言ってくれたように、わたしの存在がフェイトちゃんを少しでも癒してあげられるのなら、ただ側にいたいとそう思う。


「あのね、フェイトちゃん」
「ん?」
フェイトちゃんの肩口に顔を埋めながらゆっくりと話す。
「私が月を見上げるのはね……フェイトちゃんのことを思っているからだよ」
「私のこと?」
「うん……月の光がフェイトちゃんを感じさせてくれるから……。
 フェイトちゃんがどこにいても、見守ってくれてるような気がするから」

フェイトちゃんがわたしを抱き締める手に力がこもる。
「だからフェイトちゃんも……月を見上げたらわたしを思い出して? きっとわたしも同じ月を見ているから」
「同じ、月を?」
フェイトちゃんが月を見上げてる。
抱き締められているから見えないけど、わたしの肩から少し顎が浮いたからわかる。

「なのは、私は…………」
「ん?」


フェイトちゃんが何かを迷っている。
わたしでは、力になってあげられないのかな……?
わたしに出来ることは無い?
わたしじゃ、頼りにならない?

……ううん、違うね。
フェイトちゃんはいつでもわたしのことを思ってくれてるってわたしは知ってる。
だから今フェイトちゃんが何も言ってこないのは、わたしを頼って無いんじゃなくて、それもきっとわたしのことを思ってくれてるうえでのことなんだよね。


「私は、なのはが好きだよ」
「うん、わたしもフェイトちゃんが好きだよ」
「離れてるときに月を見上げてなのはを感じられるのも嬉しいけど。
 でも、私はこうやっていつでもなのはと一緒に見上げていたい」
「フェイトちゃん……うん、そうだね、わたしもそれが一番、いいな」

フェイトちゃんが身体を離してわたしの瞳を見つめる。
わたしの大好きな、愛しい紅い瞳。

「なのは、好き、好きだよ、愛してる」

頬に手をそえられて、紅い瞳が閉じられて、わたしに近づいてくる。
わたしも、瞳を閉じてフェイトちゃんを待つ。
わたしの唇に、フェイトちゃんの唇が触れる。
すごく優しく……少し長く。
わたしはフェイトちゃんの首に手を回して、そのまま頭の後ろに持っていった。
フェイトちゃんは一瞬びっくりして離れようとしたけど……。
その一瞬の間にフェイトちゃんの唇の隙間に舌を差し入れた。

戸惑うフェイトちゃんに構わず、差し入れた舌を動かす。
フェイトちゃんも、応えてくれた。
むしろ私を抱き締める手に力が篭って、優しく、少し激しく、何度も角度を変えて。


月明かりに照らされた静かな夜のベランダで
聞こえるのはときどき漏れるお互いの吐息だけ。


いつだって自分のことは置き去りで、周りの人を優先してしまう人だから。
だからわたしは、いつまでも待っていたりなんかしない。
わたしは、今までだってずっと前だけを見て全力全開でやってきたんだから。
待ってるばかりは性に合わないんだよ?
わたしはこんなに、フェイトちゃんを愛してる……。
そういう気持ちを込めて、キスをした。


「ん……はぁ……」
唇を離すと、お互いにちょっとだけ息切れしてしまっていて、
目が合ってクスクスと笑いあってしまった。

「なのは、身体冷えちゃうから、中入ろう?」
「うん」

わたし達は寝室に戻って、そのままベッドに入った。
フェイトちゃんがまた私にキスをしてくれて、そのまま自然と舌が入り込んできた。
「ん……ぁ……フェイト、ちゃん」
「なのは、愛してる」
「わたしも、愛してるよ」

ドキドキして心臓が苦しい。
唇を離したフェイトちゃんの瞳は情欲に濡れていて、いつもとは違う熱を感じて。

「フェイトちゃん……わたし……」
わたしの全部をフェイトちゃんのものに、して欲しい……。

でも、その続きは言わせてもらえなかった。
フェイトちゃんは1度わたしの首筋に埋めた顔を起こして、見つめてきた瞳にはさっきの熱はもう無くて……。

「なのは、ごめん」
「………………」
何も、言えなかった。

「あ、ごめんっていうのとはちょっと違うけど……謝るところじゃないね」
「ううん……どうしたの? 何か言いたいことあるんでしょ?」
「うん……なのはは私のこと何でもわかっちゃうから……もう気付いてるよね。
 なのはが今思ってるように、担当してる事件のことでちょっとあって……。
 詳しくは言えないけど、でもその事件の犯人は私とすごく関わりがあるんだ」

ちょっと、びっくりした。
何かあるとは思っていたけど……助けたい子供がいるからとかそういうことだと思っていた。
でも「フェイトちゃんと関わりがある」そう聞いたら……PT事件のことがとっさに頭を過ぎってしまったから。
フェイトちゃんが辛い思いをした、あの事件……。

「フェイトちゃんとどういう関わり? って聞いたらまずいのかな?」
「守秘義務のこともあるけど……
 今は、上手く説明が出来ないんだ、私の中でもまだ整理がついてなくて」
「そう……わかった。じゃあそれ以上は聞かないね」
「うん、ありがとう。それでなのは……あの……私、なのはを、抱きたいんだ」

……直球過ぎて顔が熱くなる。

「わたしも、そうして欲しい、よ?」

恥ずかしくて目を逸らしてしまいたくなるけど、いつまでも待たないって決めたから。
ちゃんと、フェイトちゃんを見つめながらそう伝えた。

「あっと……、恥ずかしかったよね、こんなことなのはに言わせてごめん」
「恥ずかしいけど……でもフェイトちゃんにちゃんと伝えたかったから、大丈夫」
「ありがとう。凄く、ほんとに凄く嬉しいよ」

こういうこと、フェイトちゃんもすごく恥ずかしがる人なのに。
でも今のフェイトちゃんは全然そんな感じじゃなくて
むしろすごく真剣にわたしに大切なことを伝えてくれている。

「今までは、なのはを大切にしたかったから……
 だからなのはからも自然にそう思ってくれるまでって思ってたんだけど。でも、今は少し違うんだ」
「どういうこと?」
「その、今の事件がちゃんと終わるまで、待ってて欲しいんだ。
 どうしてもそのことが気になって、頭から離れなくて。
 もちろん、なのはへの気持ちはいつも変わらないけど
 でもこの事件を終わらせないと……そんな気持ちでなのはに触れられない。
 私は、なのはのことを本当に愛してる……
 だから、そのときはなのはのことだけを考えて、私のことだけを考えて欲しいから」

ゆっくりと、真剣に、大事に……わたしへの想いを伝えてくれるフェイトちゃん。

「待っててなんて、口に出して言うことじゃないかもしれないけど
 でも、私はいつでもなのはのことを思ってるって、それを知っていて欲しくて」
「それはもう知ってる……でも今もっと知ったよ。
 わたしも、わたしだけのことを考えてて欲しいから……だから待ってるよ」

なんか、待ってるって言うのはちょっと恥ずかしいんだけどな。
「あ、ごめん、またなのはに恥ずかしい思いさせちゃったかな?」
「……わかってるなら言わないで」
恥ずかしさを隠すために勢いをつけてキスしてやったら、むしろフェイトちゃんは凄く嬉しそうな顔をして。
「なのは、かわいい……」
そう言って、優しいキスで返してくれた。
じゃれ合いながら、フェイトちゃんの腕に包まれて、幸せな眠りにつく。


フェイトちゃんに何があったかはよくわからない。
でも、守秘義務があるのに出来る限りの話はしてくれた。
どうしてキス以上してくれないのか、不安になってるわたしに気付いてくれてた。
当たり前だけど、フェイトちゃんは仕事の情報は絶対に漏らさないし、
ましてフェイトちゃん本人に関わりが深いなんて言ったらわたしが心配するのはわかっているから……
だから今までだったらきっとまた「大丈夫」ってそれしか言わなかったと思う。

でも、それでも言ってくれた。
わたしを信じてくれて、フェイトちゃんを信じさせてくれて。
いつでも周りを気づかって笑っている人が、わたしにだけは自分を預けてくれてる。
そんな風に思えて、嬉しい。

無理をする人だから確かに心配なことは増えたけど……。
それでもわたし達は大丈夫。
どんなことがあっても、わたし達はずっと離れることはない。
お互いを思うこの気持ちがある限り。
【web拍手】   

by sknow | 2009-03-19 21:03 | SS:二つの月(長編/連載中)

『マッピー』用ボーダー

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